古い男の話。
新年スタートの昨日、予想はしていたが、やっぱり飲んでしまった。カレンダーの都合で仕事始めが金曜日ということもあり、新年初日からパーッといってしまった。酒飲みというのは本当にいやしくて困る(自分のことだが。)
さて、今日は土曜日。年のせいか、前日どんなに飲んでも、朝の7時くらには一旦目が覚める。若い頃はそれから二度寝したものだが、人生も残りわずかになってくると、時間がもったなくて、そのままずっと起きている。
夕方、体調も回復し、久しぶりに高円寺ガード下の焼き鳥屋で一杯やった。もちろん、連れはいなくて、カウンターで一人夕刊フジを見ながら好きなせせりなどを頬張った。お店は満席状態で、かろうじて一席空いていたカウンターに座ることができた。まずは生ビールを注文。一気に飲み干して勢いをつけ、少し気分がよくなってふと横を向くと、20代後半と見える若いカップルが海外旅行の話で盛り上がっていた。
聞き耳を立てるというのは行儀がいいことではないが、男性の声が大きくてどうしても聞こえてしまう。夕刊フジの記事を読みながら、悪いなと思いながら横のカップルの話を全部聞いてしまった。
カップルは大学の同級生で、学生時代に仲間と海外旅行をよくしたらしい。行った国はキューバとかトルコとか、正直あまりメジャーではない国の名前が挙がっていた。今の若者はなかなか行動的だなあと思いながら聞いていたが、二人の会話はもっぱら細身の男性がリードしていた。この男性、明らかに関西出身とわかる言葉遣いで、自分のほうが旅慣れていることを何度も彼女に自慢していた。
一時間くらいたって、二人は会計をした。店員さんが伝票を持ってきて「5200円になります。」と言うと、僕はてっきり男性が全部支払うものと思っていたが「僕、3000円払うから、あとよろしくね。」とその男性が女性に言ったのである。ありえない、僕はそう思ったがその女性は殊勝にも「今日、どうもありがとうね。」と答えたのである。
時代なのかもしれないけど、飲み代というのは男性が支払うものだと僕は思っていた。借金してでも、男性が支払うものだと思っていた。でも、この頃はどうやら違うらしい。会社に入った頃、新橋なんかで先輩と一緒に飲むと、全部先輩が支払いをしてくれた。そういうものだと躾けられたから、自分に部下ができたとき、支払いは全部自分がすることにした。男女の飲み会なら男が支払う、先輩後輩の飲み会なら先輩が支払う、そうものだとずっと僕は思ってきた。
作家の開高健さんはエッセイで、男というものは女性に尽くすもの、女性を飾るために男は泥まみれになるもの、そう言っていたが、今の時代はそうではないらしい。時代が違うのかもしれないが、ちょっと寂しい感じもする。僕はしょせん古い男なのかもしれない。
写真は、毎度恐縮ですが定点観測地点、新宿です。